車椅子シーティング

車いすでの身体拘束の現状と対応

身体拘束の考え方

身体拘束の定義は、衣類または綿入りの帯などを使用して、一時的に患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限を示します。
身体拘束の禁止規定は「サービスの提供にあたって、入所者または、他の入所者の生命や、身体を保護するために緊急的にやむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為を行ってなはらない」となっています。

車いす上での身体拘束ゼロへの方法

車椅子の身体拘束

2001年に、厚生労働省は「身体拘束ゼロへの手引き」を作成しました。身体拘束禁止の対象となる具体的行為を作成し、それらの対策も述べています。
●車いすに長時間座らせたままにしないように、アクティビティの工夫
(例)不安・不快症状を解消するために、排泄パターンを把握するなど、様々な観点から評価し、原因を発見する(車いすに長時間同じ姿勢で座っているために、臀部が圧迫されている場合、車いすの座り心地が悪い場合、オムツが濡れたままになり不快なためなんとかしようとする場合など)。
●体に合った車いすや椅子を使用する
(例)床に足がしっかりと付くように、体に合った高さに調整する。
安定の良い車いすを使用する。
ずり落ちないように、滑りにくいメッシュマットを使用する。
適当なクッションを使用したり、クッションの当て方を工夫する。

対応に対する課題

Y字型抑制帯

車いすからずり落ちたり、転落しないよう腰などのベルト(ひも)やY字型抑制帯をつける者、車いすから立ち上がり転倒しないよう腰ベルト(ひも)やY字型抑制帯をつけるなど、車いす上での問題に対しての対応を図っている施設は実に多くあることが分かっています。
この対応策を多くの施設が講じている理由としては、車椅子から「ずり落ちる」「立ち上がって転ぶ」という2つの異なった問題が混在しているからです。「立ち上がる」は、立ち上がって、転び骨折など事故を起こす危険性を指しています。
転倒転落を防ぐためのアセスメントとケアのポイントは自立支援のケアプランの作成、精神機能・身体機能・能力低下のアセスメント、利用者の状況に応じた介助方法、転倒・転落事故防止のための環境整備としています。このように、立ち上がってその後の立位から転倒するリスクとゆっくりずり落ちていくリスクは異なるわけです。

車椅子シーティングと身体拘束

ベッドを含め今までの身体拘束は全ての活動を制限するものであって、新たな人間性に関わる要素を生み出さないものでした。その延長線上で、ベルトやテーブルは身体の移動を抑制し、その延長上で安易なティルト機構が立ち上がりを困難にするなどの機能を持つとされてきました。しかし、これらの座位保持装置などのベルトは、体幹と骨盤の前方支持の上で重要な機能を持っています。車椅子シーティングに精通した専門家がこれらのベルト、ティルト、テーブルを使用することで生活が活性化したり、褥瘡屋姿勢変化のリスクを低下させる機能を持っているのです。例えば、自動車シートのベルトは立ち上がりを制限しますが、加速時や旋回時に身体を保持し、ハンドル、アクセル、ブレーキの操作を行う為の上下肢の動作を容易にし、そして事故などの安全性に重要な機能を持ちます。ある意味で両刃の剣であり、使い方の問題だと言うことです。
しかし、これだけ社会問題化している身体拘束に対して、シーティングの専門家は今後、自らのそれら前方支持やティルト、テーブルを使う場合の理由、その効果、そしてそれらを含む倫理規定を提案するべきでしょう。

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