車椅子シーティング

褥瘡治療の車椅子シーティングの方法

褥瘡の状態

小脳出血後遺症の症例に対して、褥瘡治療の車椅子シーティングの方法を考えています。
この症例では、四肢麻痺・嚥下障害があり、入院当初からリクライニング車いすにて1~2時間の離床を行っていました。この車いすは身体寸法に合わせる機能が一部しかないことと、スリングシートのたわみによって骨盤が後傾し、仙骨座位となり、体のずれ落ちも認められました。大腿下部は座面から浮き、座面と接触した褥瘡部への圧迫を高めていました。車いすに座っている姿勢としては、全身的に非対称性であり、頸部や上部体幹は過緊張な状態でありました。入院時より褥瘡に対する治療・ケアは継続して行われていましたが、9ヶ月間褥瘡の状態は認められませんでした。
離床を一時的に中止。その1週間後、褥瘡の状態は若干の改善を認めました。上体が安定したので、再びリハビリを勧めるためシーティング対応を行いました。

シーティングに当たっての評価

簡易座位能力分類:3
Hoffer:3
Braden Scale:12
右坐骨結節部:NPUAP3度
マット評価:臥位での関節可動域は問題ない状態
ベッド上における自力での体位交換、座位保持は出来ず、ADLは全介助。尿・便失禁がありオムツを着用、家族より精神機能面の維持・向上のため車いすを用いた離床、散歩および外泊の希望がありました。
そのため、仙骨部への圧迫を減少させる目的で、骨盤を中心位にする、褥瘡への対応は徐圧、減圧とも最大対応することとしました。 以上の評価スケール結果をもとにシーティングの方法と結果をまとめてみました。

方法と結果

モジュラー型ティルト・リクライニング車椅子と減圧クッションを用いて、褥瘡部の減圧と良肢位での姿勢保持の確保を目的としました。その結果、リクライニング車いすでは座面に接触していた仙骨の褥瘡部が接触しにくくなったことと、減圧クッションにより褥瘡部の減圧が図れました。また、体のずれ落ちの防止と姿勢の全身的な非対称性や局所の過緊張の改善によてい、良肢位での座位保持が可能となりました。
この症例に関しては、モジュラー型ティルト・リクライニング車いすと減圧クッションを用いたシーティングにより褥瘡の改善が出来ました。このことは、介助方法の徹底も含め、褥瘡発症の外的因子である持続的な圧迫、摩擦、ずれに伴うせんだん力を減少させた事に基づいたと考えられます。
今症例を通して、作業療法訓練の中でモジュラー型車椅子や減圧クッションなどを用いてシーティングを行うことによって、褥瘡の予防・治療への対応の可能性が広がってきます。
併せて、患者の身体機能や車いすに合わせた介助方法を検討し、実施することも不可欠となってきます。

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